フォーラム・シンポジウム報告
令和6年度全国棚田(千枚田)連絡協議会総会・第29回全国棚田(千枚田)サミット
第29回全国棚田(千枚田)サミットが、令和6年10月17日~18日にかけ ~カカワレル棚田「ずく」を集めて 未来につなぐ~ をテーマに、長野県上田市にて開催され、全国から約500人の参加がありました。「ずく」とは「やる気」や「根気」を意味する長野県の方言とのことです。
サミットに先立つ10月16日には、全国棚田(千枚田)連絡協議会総会があり、令和5年度事業報告および決算、令和6年度の事業計画及び予算案、次期開催地、役員改選、棚田地域振興の推進に関する要望骨子案の議案について審議され提案どおり了承されました。
今回の開催地、上田市の「稲倉の棚田」では、2000年に地元団体から稲倉保全と活性化をすすめる会が発足し、その後2003年に地域+JA+行政を統合した「稲倉の棚田保全委員会」が設立されました。現在では地元農家、市内及び近郊の主婦・移住者・定年退職者が主に棚田保全活動を実施し、長野大学・信州大学との連携や、地元企業と棚田パートナーシップ協定を結ぶなど地域を巻き込んで取り組んでいます。
天候にも恵まれて青空の中、サミットは上田市交流文化芸術センター「サントミューゼ」を中心に開催され、ロビーでは稲倉の棚田のジオラマや、棚田パートナーシップ企業のパネル展示、全国の組織等によるブース展示に加え、信州棚田フォトコンテストの優秀作品の展示と投票ブースも設けられていました。
最初のオープニングイベントでは映像で稲倉の棚田保全委員会委員長による開会宣言が行われました。その後7つの会場に分かれて分科会に移りました。
第3分科会では「企業も棚田も得するかかわり~稼ぐ棚田を考える」のテーマで、パートナー企業である岡崎酒造株式会社の岡崎謙一氏をコーディネーターに、稲倉の棚田保全委員会委員長の久保田良和氏とのトークを中心に行われました。
稲倉の棚田では「棚田オーナー」のほかに、実際に棚田で作った酒米で岡崎酒造が醸成したお酒がもらえる「酒米オーナー」制度を設けており、参加者は年々増加し現在は120組あまりがオーナーになっているとのことです。
途中には、小諸市で蔵人体験を実施している株式会社 KURABITO STAY田澤麻里香氏も加わり、棚田を守ることでいかに企業ブランドを向上させ利益を得ることができるような環境をつくるか等の事例発表があり、その後活発な質疑応答が行われました。
午後から式典が行われ、全国棚田(千枚田)連絡協議会 堀 順一郎会長(和歌山県那智勝浦町長)はじめ関係者から挨拶や歓迎のお言葉がありました。毎年稲倉の棚田で米作りを行っている地元小学生187名による合唱では、4年前に児童達が製作した「稲倉棚田ラプソディー」などが披露されました。次に石川県輪島市の白米千枚田愛好会の堂下真紀子氏が1月の能登半島地震と先月の能登豪雨による被害の現状と復旧の状況の報告があり、取組内容と合わせて、復旧は行政とどれだけ深く関われるかにかかっており、有識者と繋がり、知恵を求めることも大切などの感想が述べられました。
次に稲倉の棚田保全委員会 久保田委員長と新旧3名の地域おこし協力隊員による事例発表が行われ、棚田キャンプや生態調査などの様々な活動についての説明を受け、棚田保全活動は社会の変化に合わせ、それぞれの地域に沿った活動を行っていくことが必要で正解はないとのお話を聞き、あらためて棚田保全活動について考えさせられました。
その後、フォトコンテスト結果発表、サミット共同宣言に続き、次回開催地の大分県別府市に協議会旗が引き継がれました。
2日目には現地研修会が行われ、実際に稲倉の棚田で営農状況やビオトープ、古墳などについて保全員の方から説明を受けました。
次回、第30回全国棚田(千枚田)サミットは、令和6年11月1日~2日に大分県別府市にて開催予定です。