フォーラム・シンポジウム報告
令和5年度全国棚田(千枚田)連絡協議会総会・第28回全国棚田(千枚田)サミット
第28回全国棚田(千枚田)サミットが、令和5年11月18日~19日にかけ 棚田を囲む暮らしを共に~ここにしかない縁がある 来たれ耕す人~ をテーマに、和歌山県にて開催され、全国から約500人の参加がありました。
那智勝浦町色川地域では、40年以上前より移住・定住の促進に力を注いできており、すでに移住者が半分以上になっています。移住者が住民となり、新たに移住者を求める動きにつながっています。
「小阪の棚田」では、移住者や地元農家などにより「棚田を守ろう会」を構成し、棚田の復田や維持管理を行うとともに棚田オーナー制度や農業体験等都市住民交流イベントを実施しています。また、旧色川村の各棚田地域や棚田を守ろう会から成る色川棚田地域振興協議会では、棚田の保全活動に加え、色川地域に合った特産品開発を模索し、ワサビ、小麦等の栽培等に取り組んでいます。
サミットに先立つ11月17日には、令和5年度全国棚田(千枚田)連絡協議会総会があり、令和4年度事業報告および決算、令和5年度の事業計画及び予算案、次期開催地計画、役員改選等の議案について審議され提案どおり了承されました。
天候にも恵まれて青空の中、サミットは那智勝浦町体育文化会館で開催され、地元の子ども達によるオープニングイベントの演奏の後、全国棚田(千枚田)連絡協議会 福井正明 会長(滋賀県高島市長)らから挨拶や歓迎のお言葉がありました。
次に事例発表として、「想像力がつなぐ棚田、私たちは今」と題して、棚田を守ろう会 外山麻子 氏から、那智勝浦町白川地区の現状および棚田を守ろう会が発足した経緯、現在の取組状況が紹介されました。
実際に現場で作業された方からの忌憚のないお話を聞き、あらためて棚田保全活動について考えさせられました。
その後、基調講演として「次世代に引き継ぐための地域体制づくり」について島根県中山間地域研究企画監 有田昭一郎 氏から、人口減少期の日本で、農業・農山村(中山間地域)をどう支えていくかについてお話ありました。島根県の状況から、より少ない人口に対応した地域で暮らしていくための仕組みづくり、若者定住の条件づくり、子育てしやすい社会環境づくりの3つの視点からの分析を、事例を交えながら解説されました。
午後からは4つの分科会があり、第2分科会では「集落空間の継承」をテーマに、移住者が半分以上を占めている色川地区の元々あった地元の色を移住者にどう伝えていくか、移住者の子ども世代にどうしたら地元で生きていきたいと思ってもらえるかなどについてパネリストから発表がありました。パネリストからは移住者と元々住んでいた人たちの間には軋轢が生まれてしまうこともあるので、誰かが間に入って調整する必要があるとの意見や、現在地域に住んでいる大人が地域の良いところを伝え続けていけば、自ずと子ども世代も地域で生きていく希望がでてくるのではないかとの意見がでました。
次回、第29回全国棚田(千枚田)サミットは、長野県上田市にて開催予定です。